日本からトリニダード・トバゴへ渡航する女性たち…その理由とは。それぞれ見てきて感じたことを本音で語るロングインタビューです。日本とトリニダードの架け橋として長年活動しているselector HEMOと、トリニダード発祥の楽器「スティールパン」の奏者である中野優希、ソカダンスユニット「TOROCHACHA」のメンバーであるダンサーKEIの3人のトリニダードの魅力や経験を通じて得てきたもの、おすすめの食べ物などトリニダードのあらゆることを熱く語ってくれました!
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HEMO(以下H):では自己紹介をお願いします。
KEI(以下K):トリニダード・トバゴと日本でダンスで活動しているKEIです。
YU-KI(以下Y):スティールパン奏者の中野優希です。日本や世界各国でパンを演奏して旅しています。
-トリニダードへ行くきっかけ-
H:まず、トリニダードに行くことになったきっかけは?
K:私が行くきっかけは、昔、私のダンスの師匠が先にトリニダード・トバゴに行っていて、彼女のレッスンではじめてソカを聞いて楽しい音楽だなと思って、ノリで行きました。
H:どうでしたか?初めて行ってみて。
K:初海外がトリニダードだったので(笑)全てが新鮮で価値観が真逆で、だいぶくらいました。
H:価値観が真逆というのはどういうことでしょうか?
K:今まで自分が見てきた世界と真逆でした。全然違う世界でした。
H:逆に私は地元高知と似てる部分が多くて! お祭りに向けて1年過ごしている所とか、だから逆にすんなり入れたっていうか。ただいまー!みたいな。
K:うんうん。
H:優希ちゃんはいかがですか?トリニに行くことになったきっかけとその感想は。
Y:最初に行ったのは2009年に行きました。なぜ行ったかというと、私はトリニダードから生まれた楽器スティールパンを行く前からやっていまして、この楽器がトリニダード・トバゴから生まれた楽器ですって演奏してるときに紹介してたんですけど、私は行ったことないけどイメージと行った人の経験から、すごくいいところで海もきれいでっていうイメージだけでお客さんに言ってるのがすごく納得がいかなかったんです。だから実際行って、本場のスティールパンの雰囲気を味わいたいなと思って。
H:初めて行った時は、パノラマ(年に一度カーニバル中に開催されるスティールパンの大会)に参加されたんでしたっけ?
Y:はい、パノラマに参加しました。初トリニは10日間しか行けなかったのですが、その時はスティールパンを叩けるチャンスがあるか分からなかったんですが、たまたま空きが出来て弾けるようになって。で行って思ったことは、私は周りの人から気をつけてね、気をつけてね、と言われて行ったのですごいびびってました、正直。海外の経験はありましたが、黒人の人がたくさんいる国に行ったことがなかったので、最初はすごく怖かったです。
H:パノラマって誰でも参加できるんですか?チームに入ったら。
Y:そうですね、ちゃんと演奏できれば大丈夫だと思います。
H:それは何かテストみたいなのがあるんですか?楽譜渡されてすぐ弾けるとか。一人一人代表の前でテストされたりとか。
Y:楽譜はなくて、10分間くらいの曲を全部暗記して弾かなきゃいけなかったんで、暗記するのが大変で。
H:全部のチームが楽譜ないんですか?
Y:事前に楽譜をくれるチームもあったりするみたいです。アレンジャー(パノラマの曲をアレンジする人)が譜面を作っていれば、事前に楽譜を送ってもらって、海外から来た人にもすぐできたりします。各バンドによります。
H:でもスティールパンで行く人は、見るというよりも基本的には現地で叩いて参加しに行く人が多いですよね?パノラマっていう大会に出るために。
Y:そうですね、日本でパンを弾いてる人達ってコミュニティが狭いから、トリニダードに行ってきたよ、弾いてきたよ、楽しかったよっていうのをみんな聞いてるから、自分もやれるかなって。スティールパン弾く人が行く時は、自分も叩きたいっていう目的があってトリニダードに行く人が多いと思います。
–トリニダードヘ赴きスティールパンを演奏する日本人 –
H:その日本のコミュニティが狭いというのは、日本で何人くらいスティールパンをやってる人がいるんでしょうか?
Y:私も分からないですね。把握できない..。
H:今年何人くらい入ってたんでしょうね?パンやってる人。
Y:そんなに行っていないと思います、10何人かもしれないです、実際にパン叩いた人は。
H:じゃあやりたいなって思って行っても、認められなかったら出れないんですよね、パノラマには。
Y:出れないです、実際出れなかった子も今年いたと思います。
H:そういう人は見学して帰ると。
Y:でも、それでもパン弾きたいっていう熱意が強いから、毎日弾けなくても練習して。
H:出れなくても練習とか行って勉強させてもらえるんですか?
Y:楽器あれば叩かせてもらえるけど、だいたい弾けるプレイヤーは前日にきてバーって弾いて、今まで自分が練習してた場所を取っちゃったりとか。
H:根性いりますね!人を押しのけて前に出るっていうような性格でないと、外国人とトリニダードの人も日本人の人もポジションは同じじゃないですか。
Y:うん…。どうですか?ダンスの世界では。
K:ダンスの世界は、どうだろう。
H:DJとかはそうです、カーニバルトラックにいっぱいDJが乗ってるんで、1日10時間しかないとしたら、5人乗ってたら2時間ずつじゃないですか。飲んでボーっとしたらどんどんDJされるし、いちばんいいところでDJやりたければ、パソコン持って(ブースの近くに)立って待ち構えてないとです。
Y:スケジュールみたいなのはないんですか?
H:ないんですよ。
Y:じゃ逆に、DJの世界もパンと一緒で、ちゃんと上手い人が。
H:そうそう、ぜったいやれる人がサバンナでプレイできる。(サバンナ:首都ポートオブスペインの中心地に位置する国立公園Queen’s Park Savannahのこと。カーニバル中のメイン会場としても使用される)
Y:やろうっていう気持ちとハングリー精神がある人が、トリニダード人に限らずできるんですか?
H:メインの人は決められててあいつがサバンナだよな、みたいな。サバンナの前のところからはこいつで、サバンナ終わった後ってみんな休憩タイムなので!HEMO!みたいな(笑) でも、めげなくて最近はST.JAMESとかやらせてもらってます(笑)
Y:へえー。
H:サバンナ終わったあとみんなバーッと汗かいてダラダラしてるから、そことかを最初やらされてて、今やっとその3つぐらい先をやらされてて、アーリータイムみたいな。
Y:ちゃんと契約みたいなのがあって、ヘモさんは雇われてて?
H:一応雇われてはいるんですけど、やっぱり中でのDJの上下関係とかはありますよね。
Y:じゃ最初はこうやって(DJブースの近くに立って)待ってる?
H:最初は来始めたときは若かったし、ガツガツやりたいやりたいって戦ってたけど、最近はHEMOそろそろやるか~?みたいに呼ばれて(笑)隠居です。
K:2016年のDJ INTERNATIONAL ソカモナークのときはバリバリすごかったけど!
H:ここはちゃんとしなきゃいけないって現場は、やりますよ!(笑)
K:ゲストだったし。
H:パノラマに出ないでゆったり過ごしているパン奏者もいらっしゃるんですかね?
Y:私は、シルバースターズ(Silver Stars Steel Orchestra)っていうチームにいるんですけど、そのチームでやるのは絶対で、でも他のバンドもやろうかなって思って、練習も本当は毎日びっちり参加しなくちゃいけないのですが、たまに他のバンドと掛け持ちしてると、ちょっと練習を抜けなきゃいけないんですけど、バンドのリーダーにちょっと行ってくるねって言い、抜けます。でもしっかり演奏するときは演奏するっていう。初めて行った時は、演奏できるかどうかわからなかったです、当日まで。だから朝から晩まで、1日中必死で練習してました。記憶しなきゃいけないっていうのもあるし。すごいガッついてやってました。
(PCS Nitrogen Siver Stars Steel Orchestra FACEBOOKより)
H:トリニダードのカーニバル期間って短いじゃないですか?その間にパン奏者であればパノラマの課題曲を覚えるとか、DJであれはその年のリリース曲、約2000曲リリースしてるうち、100曲にしぼるとか、けっこうそのギュってやる感じが短期間で面白いけど、体力使いますよね?
K:うん、疲れる。
H:達成感はデカいけど。
Y:疲れるんですけど、達成感もだし、トリニダードにいるとやらなきゃっていう感じになり、今年もラージバンドだけでいいやって思っていたのに、結局、このバンドで弾いてみたいなとか、欲が出てきます。
H:それは違うアレンジャーで、全然違うスタイルを学べるからやりたんですか?他のバンドで。
Y:それもだし、友達がアレンジしたバンドが面白いからとか。今までずっとやりたかったバンドで、とか。
H:それはやっぱり惹かれるのは音楽性?そのバンドに対して。それとも友達やお知り合いが多いから一緒に弾きたいなとかもある?
Y:アレンジャーが友達だからっていうのもありますけど、でも基本的には自分がこのアレンジいい!と思ったら、演奏したいと思って行ってます。
H:じゃ一応聞きに行って、最初は。チェックしにいってからやるっていう感じ?
Y:今年のことなのですが、毎年このバンド面白いなと思っていて、いつかこのバンドでやりたいけど、今年はいける!と思って今回初めて参加したら、シングルパンのカテゴリーなんですけどそのバンドが優勝しました。すごい面白いアレンジャーで、その子は大学とかで音楽を勉強してたわけではなく。
H:ストリートの叩き上げ。
Y:でもいま、パントリンバゴ(Pan Trnibago :トリニダード・トバゴでスティールパンを取りまとめる組織。パノラマを主催している。)のウェストかどっかとプレジェントになってるんですけど、すごい頑張ってて。応援したいなっていうのと、アレンジが面白いからやってみたいっていうのと。シングルセカンドっていう楽器を挑戦したいというのもありました、最初テナーをやろうと思ったんですけど、配置が一緒だから。シングルセカンドをやってみようって。
– 初めてトリニダードに行ったとき-
H:何回か行ってて、分かってるからやれるやり方ですよね。はじめてスティールパンいいなって思って行く人にはとてもわかりにくいシステムですよね?
Y:全然私も分からなかったです。
H:何か聞ける問い合わせ先とかあるんですか?日本からパンやりたい人が行く時に。この人に聞いたら教えてくれるよーとか。
Y:私が最初に参考したのは、私の大親友でもある大西ユカリちゃんという子が、スティールパンマガジン(通称:パンマガ)という雑誌を作っていまして。私がトリニダードに行きたいって言ったときに、たまたま初めてよさこいに参加したときに一緒だった友達に今年トリニダードに行くんだって言ったら、私も行きたいと思ってたんだよって言われ、じゃあ一緒にいこうって言ってて。一度トリニダード行ってるから、彼女にくっついていこうと思って。そしたら彼女が腰痛めて、行けなくなってしまったのです。どうしよー!って思ったら、彼女がパンマガをくれて、そして別のパンプレイヤーでトリニダード行く子を紹介してくれて、その人が行く飛行機と一緒に合わせて、全部行きも帰りもこの人にくっついていこうって。
H:じゃあパンプレイヤー同士の横のつながりでみんなトリニダードに行くことが多いということですかね?
Y:基本的にはそうですね。
H:周りに聞いてみて、その人を頼って行くっていう。
Y:一人で行こうって考える人もいるみたいですけど、一人じゃ絶対危ないってことも聞いてたし。私はそうしました。
H:で、ユカリちゃんを頼ったんですか?最終的に。
Y:いやユカリちゃんには会ってなかったです。パンマガを友人がくれたので、これを参考にしました。持ち物とか全部書いてあって。こういうのあるといいよとか。例えばヤード(Pan Yard:スティールパンのバンドの練習場)は蚊に刺されやすいから虫除け持ってきてくださいとかそういう細かいことまで書いてて。今までのパンプレイヤーでトリニダードに行った人の感想とかも書いてあって。
K:ガイドブックみたい。
H:それいいね、おすすめ持ち物リスト。
Y:ここだけの話、こういう本あったらいいですよね、パンの人向けの。
H:パンマガよかったよね。
Y:そしたらパンの人にもいいし、これからトリニダードに行く人もたくさん増えてほしいから。