現在アメリカ・ミネソタ州で起こった白人警察官が黒人男性の圧迫死させた事件をきっかけに、人種差別”Black Lives Matter(ブラック・ライブス・マター)”の抗議デモが広がり、暴徒化していることが連日報道されています。

私はカリブ海を訪ねたことをきっかけに、ラム酒が好きになり、ラム酒のことを学ぶと必然的に、砂糖の歴史・三角貿易に行き着きます。そして今に至る人種差別の根源である、この時の”奴隷”制度はまさにカリブ諸国でも舞台となっていました。コロンブスが新大陸として発見したカリブの島々に、サトウキビの苗を持ち込みました。カリブ諸国で製糖業が開始されたことによって、既に植民地化されていた西アフリカ諸国の国から奴隷として人々が運ばれ、労働力とさせられたのです。カリブ諸国の先住民は、ヨーロッパ人に虐殺またはヨーロッパからの病気に感染してほぼ絶滅してしまい、この奴隷貿易時代(18世紀には)に、奴隷として連れてこられたアフリカ人(黒人)が人口の9割を占めていたそうです。

サトウキビの苗がヨーロッパから持ち込まれました

いまでもカリブ諸国には奴隷制度時代の足跡があり、歴史を知るための場所としてたくさん残り、世界中から観光客が訪れています。そこで奴隷の人々がどんな扱いを受けていたかという話について知ると、それはそれは凄まじく、胸が痛みました。

小さな劣悪な環境に何人も詰められて寝泊まりさせられたのがわかる奴隷の小屋…

人種差別については、とてもナイーブなトピックスです。また、私はカリブ海には何度となく訪れていますが、カーニバル期間の1〜2ヶ月ほどの滞在が多く長期で住んだことがあるわけではないので、表面的なことしか見ていないかもしれなせんが、訪ねてみて感じたことを書いてみようと思います。

トリニダード・トバゴは、1838年奴隷制度が廃止された後、インドから来た労働者が多いため、アフリカ系40%、インド系40%、その他混血、白人、中国系と様々な人種が混じっています。そのためか、アフリカ系とインド系の対立・互いを受け入れない風土というようなものは少しあるものの、多種多様な人種が共存しているカリブ諸国では特殊な国であり、黒人への強烈な人種差別というのはそれほど感じたことはなかったです。

まだトリニダード・トバゴに行き出して間もない頃、現地でできたアフリカ系の黒人の友達とビーチにいった時、その友達が、ビーチにいる男性を指差して「あいつの黒さヤベー、俺なんかより断然黒いぜ!」と笑いながら言っていたことがあります。日本人でも「あんた色黒いな〜」と言い合うことがあるように、肌の色って気にしているんだなーと思ったエピソードがありました。黒人/白人がどうとかいうより、私たちに向かって「チャイニーチャイニー」や「ニイハオー、(変な中国語)」と道でランダムに言われたり、「アジアの女と一回○ってみたい」と言ってきたり、そういう下劣なアジア人人種差別の方が気になるのがカリブです…(苦笑)

一方、今年2020年、カリブの中でもとても安全なリゾート地として有名なバルバドスに滞在する機会がありました。バルバドスは、国の主要産業が観光業で、大使館によると、約80%が黒人だそうです。主にイギリスに人気のリゾートとして観光業で成り立っているというバルバドスは、「黒人/白人」という人種差別が根強く残っているのを感じました。人気のビーチの近くにあるヨットクラブは今だに会員制が残り、驚くことにいまだ会員は黒人以外です。この背景にはバルバドスの植民地がイギリス一国だったことリトルイングランドと称されること、山が一つもなく奴隷制度の時に管理統一しやすかった歴史が影響されているように思いました。

バルバドスの友達(その方はアフリカ系の黒人)は、「白人の友達がいるけれど、その子にとって私は真の友達ではなくて、自分には黒人の友達がいるから、自分はRacist(人種差別する人)ではない、と周りに見せたいために取り巻きの一人にしているだけよ〜」と話してくれました…複雑。。。

ホテルのバーに飲みに行くと、イギリスからの白人観光客がたくさん。私たちもバーで飲んでいたら、ビーチで仲良くなった現地の方が話しかけてきたので、話していると、横にいた白人の観光客の方が、「大丈夫?彼が迷惑だったら、店員にすぐ言った方がいいわよ」と言われました。その時感じたのは、心配してくれたのはありがたい気もするけれど、これが白人男性が私たちに話していたら果たしてこの女性はこの言葉を投げかけただろうか?バルバドスのことを聞いていたので、現地の方と話すのも観光の醍醐味だけど、黒人の道で会った人だから警戒するのか?」と思ってしまいました。

カリブで訪ねたラム酒工場のオーナーや不動産、お屋敷を持っている人々はほぼ白人。それが悪いことではないのですが、植民地時代影響力、その時の支配力の強さを、これまでそのようなトピックスには無知だった私がカリブでは目の当たりにしました…。

カリブの諸国には、トリニダード・トバゴは多種多様な人種が共存している国があること、また、まだまだ明らかな人種差別が残っている国があるということを、両方実際に見ることで、歴史・人種について考え、このような問題を肌で感じることができました。

何より私は、ここにいる人たちが生み出した音楽・カルチャーが大好きなので、心から好きと思えるカルチャーを生み出してくれた彼らに感謝し、リスペクトしています。だから、これから先私は肌の色で人を蔑むようなことはしたくない。

抗議デモが世界に広がっていますが、暴力的にではなく、建設的に進むことを願っています。差別は人種だけの問題ではない…時や場所が変われば自分にだって起こりうることですよね。それぞれの正義があるけれど、一人でも生きやすい世の中になるよう、ちゃんと知って、自分で考え選択し、責任を持った行動をしていくことが大切なのではないかなと思います。